【放談】雨宮天 音楽で彩るリサイタル


はじめに

はるか遠い昔に貪るように耳を傾けのめり込んだ気がする。

「青春」と名付けられたその時期をその音楽に支配された、この曲たちを聴きながらそういう風に一歩ずつ大人になってきた、そんな気さへする。

 

こちらは2017年9月24日にZepp Tokyo、10月1日にZepp Osaka Baysideにて催されました『LAWSON presents 雨宮天 音楽で彩るリサイタル』の公演全体を通しての感想文です。

開演前


会場に入ると青に充ちた空間。なんだか、“Various SKY”を思い出しました。

 

でも、そこで流れていたのはホルストの『組曲 惑星-木星』(平原綾香さんの『Jupiter』の原曲)など荘厳なクラシックで。


そんな経験は今までなかったものですから、開演前からワクワクがとめどなかったのを憶えています。

 

開演を知らせるブザー、先程まで青のエーテルに充ちていた空間は、宇宙空間の様な真っ黒な暗闇に包まれるのです。


「雨宮天として歌うこと」という重力から解放された時、彼女はどんな風に歌うのだろうと、ただただふわふわと、つかの間の宇宙空間に浮かんでおりました。




セットリストはこちら。
「2017年」の異時間感が半端ないですね。

このライブイベントは全公演を終えた際の多幸感をひしひしと感じまして。

「ここにいる私の歌を少なからず聴きたいと思ってくださっている方(中略)私がそういう人たちの前で好きな曲であったり、好きになったルーツやエピソードを交えて歌えて嬉しかったです。」
「大好きな曲を歌えて、この曲のこういうところが好きなんだって皆さんと共有できて嬉しかったです。」

これまで話すに留めていたモノをこうして見せて頂けたこと、共有してもいいかなと、自分が好きなモノやルーツを語ってもいいかなと思ってもらえたのかなってことがとてもとても嬉しくて。だって、語るって誰に語るかですごくハードル高いじゃないですか。



全部を知りたいとか言う立場でも関係でもないし、ましてや生きている理由をあなたに作ることなんてできなくて、だから見せたくないこと共有したくないことや、語りたくないことは、もちろん語りたいと思って頂けるなら全身全霊で受け止めるけれど、語りたくないことは語ってくれなくて良いよって。

もう少し自分のお話。

そもそも関心を持つこと自体が失礼だと思っている節があり、御本人にはもっとこういう姿を見せて欲しいという気持ちはなくてですね。



出来事を語る事って星座をみたいなもので、既に出来上がっている結果を、観測者が観測者自身の為に区分けしていく様なものだと思うのです。どんな星も、星座を作る為に生まれてきた訳ではないでしょうし、観測者からは偶然そう見えてしまった、という様な。

観測者って役割を任ぜられた以上星座を作ることは許されてるんだろうけどそこを覚えておかないといけないと思うのです。


そんな風に勝手に考えてるから、星を見て「あれ欲し」とかあの星に「こうなって欲し」と手を伸ばすのは、おそらく僕の仕事じゃないと思ってる節があって、正直具体的にこうなって欲しいという感情は僕にはありませんでして。



だから今回「この曲を歌ってほしい」とかはなくて、それはこれまでもこれからもきっとなくて。



あ、でも、後述するとこだけれども渡辺真知子さんは作曲も作詞もこなされる方だし、いつか、そのー、渡辺真知子さん作曲作詞の曲を歌えたらとても素敵ねー、なんて。         



もちろん、自分が好きな歌を(イミテイション・ゴールドとかね)を歌ってくれたなら嬉しいけれど、それは今回のライブイベントが御本人の言葉を借りるなら「私が好きな曲を好きなように私のために歌う」、カラオケ的なイベントだったからで。



そうなんですよね、カラオケだなぁーって。


カラオケで自分が好きな曲を自分が心許せる人が「好き」って歌ってくれたらとても嬉しかったじゃないですか。 

だからこれから触れていくけれど、その「あ、この曲好きだったんだ!」というのが心底嬉しくて。


今回の曲たちはたまたま知っていたけれど、カラオケで曲を知る/再発見するのと同じ感覚だったなって。



「あ、こんな曲があるんだ」、「この曲こんなに良い歌詞なんだ」、「この人こんな曲が好きなんだ」って。



子供の頃のあの「理想郷」だったような、「初めて」との出会いに鋭く心を動かしていたあの頃に還っていくような感覚。


曲との出会いや好きなルーツを御本人の口から聴けたのは本当に勘違いするけれどこれまでの「肯定」であって、そんなあなたを彩る曲たちと出会いに満ちていた場で在ってそんな場で心底楽しそうにされているのが本当に嬉しくてねぇ。



長々と書いたんですけれど、所々に自分の好きな曲も書いていて。

せっかくそういうリサイタルだったので。


曲の感想というか、そんな曲を感じて発見したこと・感情を書いていったので、あまり公演の情景には触れてないかも。


またあったらいいなぁ、本当に。



◯異邦人/久保田早紀(1979)

 

イントロと同時に下手から入場される雨宮天さん。

 

リサイタルの1曲目を飾ったのは「ここ半年くらいですごい好きになった曲」で、「カラオケに行っても毎回1曲目に歌います。」という久保田早紀さんの『異邦人』。

今回のリサイタルでもその為1曲目にもってきたそうな。

 

 

ライブやリリースイベントにあたってしばし「カラオケで練習してきた」ことを公言されている雨宮天さん、そんな練習として向かったカラオケでも「でも歌っちゃうんですよね()と。

 

 

この後のMCでは「透き通った歌声と異国という独特イメージが本当に素敵です」と、お話されていましたね。

 

 

ステージ中央に立たれた瞬間、バックの幕に浮かび上がる影が逆さになっていることに気付きました。これが今後の中でどの様な効果をもたらすのだろうか、とねぇ。

ブログの方はまだ拝読してないので分かりませんけれど、Twitterを眺めている限り、結構この『影』の感想を述べられている方が多いですよね。あと照明とか。

影とか照明に他の方がどんなフィクションめいた出来事を見出したのか読むのを楽しみにしつつ、ここでは僕が見た景色。

 

この曲はすごく青い曲だなぁと感じられまして。それは、雨宮天さんのパーソナルカラー的な意味ではなく、ただ純粋なまでに曲から濾過される『遠さの青』だな、と。

 

少し青という色の遠さについて。僕がもつ『青』へのイメージは小林康夫教授著の『青の美術史』を基軸として色々とブリコラージュしたものです。おススメです。

 

僕らは空や海という『青』に包まれて様々な『青』に囲まれ身近に感じて生きていますよね。しかし空や青はそう見えるだけで、自然界に『青』という色はほとんど存在してなくて。

 

例えば絵画において青の顔料である「ウルトラマリン・ブルー」は人工的な合成法が発明されたのは他の色と比較すると最近の1827年ですし、現代でも薔薇やLEDなど様々な分野においても『青』の発明は最後、1番遠い課題であってきました。

 

色の発明プロセスとして古い順にまず明暗の『黒/白』、次が『赤』で『黄色』や『緑』。そして最後に『青』だそうで。盲目の人が開眼手術を行った際に知覚していく色のプロセ スも明るさの『黒と白』から始まり 最後に『青』なんだとか。

 

 

『青』という色は地球が誕生して 以来最も人間と密接に関わりながら も、人間が再現し、作り出し、使いこなすのは困難で時間がかかった色 なのですよね。  

だからこそ、そこに夢が立ち現れる訳でしてら未来はいつもそんな『青写真』から始まるのですよね。

 

他にもドイツでは「サボる」という現実から「遠 く離れる」ことを「blau machen」(青 を作る)と表現しますし、空想 やおとぎ話はフランス語で「conte bleu」と表現します。そして、まるで到達し得ない遠く理想的な存在を「青い鳥(osieau bleu)」というのも世界共通ですよね。

 

僕らを考えてみても身体のうちには赤い血が流れてますけれど(赤は『青』と逆で近さ)、青という色要素はどこにもなくて、だからこそ空へと手を伸ばすのでしょうか。

 

こんな感じで、僕は『青=遠さの象徴』として見てるんですけれど。脱線しましたが必要事項です。    

 

歌詞に触れてみます。

 

 

子供たちが空に向かい両手を広げ

鳥や雲や夢までも つかもうとしている

 

 

 

「空」。身近でいて、とても遠い。まさに空は『遠さの青』なのです。まだ子供たちはその遠さを知らず、無邪気に手を伸ばします。

 

 

 

その姿は きのうまでのなにもしらない私

あなたに この指が届くと信じていた

 

 

 

その近くて遠い空の青に手を伸ばす無邪気な子供の姿と、無邪気にも身近に感じていたあなたに手が届くと信じていた私。

 

美しい比喩ですよね。

 

 

今回のリサイタルで歌唱された曲は、そんな遠い誰かを想った歌が多かった印象です。

 

そして雨宮天さんのパーソナルカラーでもある青い光がステージ上に充ちることにより、効果的にその『遠さ』が演出されている様に感じられました。

 


「今日はこんな感じでいきます(笑)」

東京公演1部でのそんなMCに、公演を重ねるにつれ、「知っていると思いますけれど」、「もう大丈夫でしょうけれど」、「もうそんなに説明しなくてもと思うんですけれど」という語りが付け加えられていったのが、その語りから勝手に受け止められるものが勝手に嬉しかったり。

 

「なかなか『異邦人』から始まるイベントってないですよね。」と仰っていて、東京公演1部での騒めきを可笑しそうに語っていらしたのは大阪公演の1部でしたね。


大阪公演2部では駅のエスカレーターで右側に立って「あ、大阪だ」と感じたというお話をされていました。駅からすぐに会場入りしたそうで、2部の前にたこ焼きを食べて大阪を味わえたそうな。

アイマスのライブも翌週に控えていて、それに付随するリハやらでとにかくお忙しいのだろうなぁ、と。



東京公演2部ではグッズのお話もされていました。

本人もグッズの詳細を当日知ったそうで、驚いたのと同時に「フォントに今も昔もないですけれど『あ、これは昭和だわ』」と、感じたそうな。


ブロマイドのあの袋のやつ、凄く懐かしいですよね。よく買ってもらってたのは憶えているんですけれど何の絵柄だったのかはあまり思い出せず。

まぁ、諸々理由あって買い逃したんですけれど。欲しかった。

 

この曲間のMCでは


「あ、この人カラオケでこんな感じなんだなって思っていただけたらいい」


「好きな曲すぎてカラオケでもそうとうノリノリで歌っている曲たち」


と仰っていて、


どういう風にして出会ったのか、歌っているどこが好きなのか、そういう人なんだって私のこと知ってもらえるようなイベントになれば。」


という発言が1番印象強く残っています。

その発言を養分とした感情はそこかしこに散りばめていきますので省くとして、とにかく、嬉しかったです。

 


◯飛んでイスタンブール/庄野真代(1978):東京公演

東京公演限定曲となったこの曲。この曲との出会いは中華料理店だったそうで、家族で訪れた際に店内で流れてきたそうです。(ザ・ベストテンの曲振り風)

 

「歌詞が面白いですし耳に残る曲で、メモに残しておいたんです。」

「メモして家に帰ってじっくり聴いて好きになったんです」

と、しばしそうやって気になった曲は歌詞をメモしていたこと、出会いの場や再発見の場が中華料理店だということを仰っていましたね。

 

この曲については

「個性が強くて歌詞が独特、それがクセになるんですよね」と。

カラオケで歌うようになって割と新人だそうです。

     

後ろの幕の逆さ影が砂漠の蜃気楼みたいで歌詞にある砂漠の情景思い起こさせるなぁと。そこが印象的だったんです。

 

でも、イスタンブールって砂漠ないんですよね。

 

たまたまエッセイを読んだことがあるんですけれど、この曲が発売された後にイスタンブールを訪れた際、雪に驚いたこと、「砂漠を通ってイスタンブールに着いたとも解釈できるし…」としばし考え込んだと書かれていました。

 

耳に残るあまりそう思い込んじゃうひとも多いみたいで、そこも含めて凄く不思議な曲ですよね。



◯シンデレラ・ハネムーン/岩崎宏美(1978)

 

アナウンサーの高橋真麻さんがモノマネ番組でノリノリで歌う姿を見て知ったというこの曲。

「御本人もキレッキレで声も安定しているんです!」と興奮気味に語られていました。

御本人を拝見したんですけれど、キレッキレでした。

    

イントロと同時に、先ほどの言葉を強く意識させる様にノリノリで左右にステップを踏む雨宮天さん。

腕の振りがとても好きでして、しばらく頭から離れそうにないです。

 

逆さまに左右に揺れる逆さ影がとても印象的でした。

ノートに踊る「かげかげかげ」「かーげ」の文字。

 

そして何よりあのノリノリな、ウキウキに満ちた顔。

 

 

「ここ2週間くらいで『うわー、シンデレラ・ハネムーン歌いたい!』ってなって」と思われたそうで、実はこの曲最初の構想ではセットリスト入りしてなかったそうな。

 

岩崎宏美さんについては「若い時から、二十歳、私より若い時からすごい大人っぽい歌声で!」『聖母たちのララバイ』を例に挙げながら魅力を語られていましたね。

 

うちの母が凄く好きな曲でして、よく車で流れていたことを思い出しました。小学生低学年くらいの頃。

懐メロの再発見でしたねぇ、本当に。凄く気に入って、実家から音源取り寄せました。


◯かもめが翔んだ日/渡辺真知子(1978)

 

東京公演1部、沸いた歓声に対して「この反応嬉しいなー!」と仰っていたことがこの公演がはじまって、1番最初に嬉しかった景色です。

 

「この曲もたぶんモノマネ番組で歌われることが多くてそこで知ったっていう方もいると思うんですけれど。かくいう私もですけれど(笑) 出足から印象的ですごいかっこいいですよね。“Various SKY”でも歌った八神純子さんの『みずいろの雨』もそうなんですけれど、中学時代からずっと好きな曲で。あの、まさか『かもめが翔んだ日』まで歌うことになるとは、ね、思ってなかったんですけれど。すごく長く好きな曲なので、おもいっきり歌わせてもらいます!」


東京公演1部ではその様に語られていました。ブログでも懐メロとしては登場回数が多い曲のイメージで、雨宮天さんの日常を非常に彩っているのだろうなぁという印象でしたので、今回そんな曲を聴けて嬉しかったです。

 

「始まり方が印象的で、メロディーもかっこいい」、御本人もそう仰っていましたが強く頷けますよね。その印象的な始まり方に御本人の伸びのある歌唱がハマっていて鳥肌が立ったことを憶えています。

この曲、渡辺真知子さん御自身の作曲なんですね、後述する『迷い道』は作詞作曲の両方をされていますし・・・しゅごい。

 

 

渡辺真知子さん歌唱のお気に入り曲として『ブルー』、『迷い道』という切ない曲もあることを仰っていましたね。

『ブルー』はあまりしっかり聴いたことがないのですが、『迷い道』大好きです。オススメです。

 

 

「予習してきてくれた方も多いと思うんですけれど、4公演目となると「分かってるよー」って方もだいぶいらっしゃると思うんですけれど、ご本家見たことある人とかは動きとか、ね。私が本家の真似をしてるのが分かる人もいるかもしれませんね、かもめのこれとか、いろいろとやってるんで、ちょっと恥ずかしいですけれど、気づいてもらえれば嬉しいです。」

 

大阪公演の2部ではその様に仰っていました。実際に御本家で見覚えのある振りがあったりと、まったくその時代を生きてないんですけれどとても懐かしい感覚になりました。

 

そして、照明の演出も良かったですねぇ。

 

ひとはどうして 哀しくなると

海をみつめに 来るのでしょうか

 

ここでは青色の照明。海だから青というのもいいですが、何より哀しくなるのはあなたを思って、あなたを遠くに感じて、だと思うんですよね。

そんな心情が顕れた様で。「この後の歌詞が赤だったらいいなぁ」、なんてぼんやり眺めていました。

 

あなたを今でも 好きですなんて

いったりきたりの くりかえし

 

少しだけ歌詞はとぶのですが、 しっかり赤色の照明でした。

赤は自分の体内に流れている血の色ということで、先程も述べたように青とは対極のイメージなんですけれど、「あなたを今でも好きです」という自分の内の想いが顕れていて、先程の遠さの青と相まってねぇ。

 

熱燗がほしくなりますねぇ。

 

あなたはひとりで 生きられるのね

 

この辺りをどう読むかって人それぞれで、そこが曲の解釈に直結してくると思うんですけれど、雨宮天さんの歌唱でこの歌詞を聴いた瞬間に、きっとこの人物はこんな気持ちだったんじゃないかなぁと、浮かんだのは若山牧水のあの短歌です。

 

『白鳥は 悲しからずや 空の青 海の青にも 染まずただよう』

 

(白鳥はあんなに美しい空や海にも染まろうとすることもなく、わたしのこの想い(青)に染まることなくひとりぼっちで飛び立つ。

そんな白鳥が私はいとおしい。その姿は美しい。白鳥よ、どんなに自然が大きく美しくとも、その中でくっきりと自分の姿を写して漂いながらも飛び続けてほしい。あなたはひとりで生きられるのだから)

 

この短歌の解釈も幾通りできるんですけれど、歌っている女性の気持ちに合わせるとこの訳が最適解なのかなぁ、なんて。

 

また、この曲後のMCでは「良かったらメモって帰って、仲間が増えたら嬉しい」、「『なつかしの名曲』って番組だんだん減ってきちゃったのかな、わかんないけど(笑)」と、仰っていましたね。

 

実際大阪公演の後日、ふと退勤中にTwitterを見ると昭和歌謡番組の実況をされている方も多くいらっしゃいましたし、効果は絶大で仲間もたくさん増えたんじゃないかなぁ、と。

そして確かに「懐かしの名曲!」って番組減りましたよね。子供の頃うちは水曜日の夕食時は必ず『速報 歌の大辞テン!!』でしたねぇ。僕の中であの番組がとても懐メロの出会いの場として1つの時代だったなぁと。

 

その点、雨宮天さんは公演中しばし、「モノマネを聴いて御本家聴いて、いい曲だなって」という趣旨のことを語られていましたね。

そして最後には決まって繰り返し繰り返し「御本家をご覧下さい」と、リスペクトを欠かさないのでした。 

 


◯恋におちて-Fall in love/小林明子(1985)

 

「ありがとうございます。本当にこんな感じでいくけど大丈夫ですか?(笑) すごいみなさんがあったかいので私は好きな曲を歌えるんですけれど、私が好きな曲って70年後半から80年に固まっていて、それが自分の音楽活動にも繋がっているんです。そんな曲を聴いているとだんだん自分の好きを歌っていきたいって、出していくようになったんです。アルバムの『羽根輪舞』あたりからオヨヨ?って思ったかもしれないんですけど(笑) ビブラートや抑揚もすごい影響を受けていて、ライブでのタイミングの取り方も影響を受けているんです」。

 

東京公演の1部では、御自身のパフォーマンスに影響を与えていることを仰っていました。

 

この懐メロたちはお母様は世代ではなくて、ご本人が好きで取り入れていったそうで、ビブラートを練習したのは『津軽海峡冬景色』を歌いたくてだったそう。

勝手に感じていることですけれど、そんな姿勢はご本質で変わらないんだなぁ、って。

 

「今日は覚えさせて帰る気満々ですから(笑)」

 そう仰った時の笑顔がねぇ。

 

 

ここでキーボードが運ばれてきてピアニスト・橘哲夫さんがご登場。

大阪公演の2部では「ここからは生ピアノで!」「おぉー!」という反応に対して、「知ってるくせに!優しいねー!」ととても楽しそうに。傍観者おじさんはそんな姿をニヤニヤとしてました。

 

橘さんはいつもTrySailのコーラスを作って頂いている方で、『あかね色』のハモリなど、突然思いつきで「この曲やりたいです!」っていうハモリを毎回サポートしてくださっている方、と。今回は初生ピアノということでお願いさせて頂いたそうです。

 

 

この曲の印象については「好き」という感情を支える底を掬いとるように紡がれていましたね。

 

「この曲とても素敵で、私が好きなバラードでもかなり上位で。

サビ終わりすごく情景が浮かぶ切なくても、こう、素敵なフレーズなんですよね。」

 

 「歌詞がすごく好きなんです。サビの終わりが『ダイヤル回して 手を止めたI’m just a woman Fall in love』なんですけれど、そこがすごく印象的ですよね。ダイヤル式に馴染みはないんですけれど、この曲ってプッシュ式なら成り立たないですよね。この先のウーマンって歌詞がいいですよね、ダイヤルを回してプッシュ式では無い、ダイヤルならではの時間に切なさを感じる、私はただ恋におちた女性というのが。」

 

「自分にこんな経験ないけれど、男性もぎゅっとなるような、女性的な歌詞を聴いて頂きたいです。」

 

「なんだろうな、歌詞、が大人の女性っぽくて、出てくる単語が凄く綺麗。メロディも優しいし、すごく女性らしい、綺麗な曲。」

 

 

そうですよねぇ、「出てくる単語が綺麗」には自分の中のこの曲のイメージを囲って頂いたような、それくらいの気づきでした。御本人も仰っていますけれどダイヤル電話の生み出す気持ちの間が美しく紡がれていて、ただただ詠嘆のほとばしりとなりますね。


もしこれが現代verとなるとどんな歌詞が紡がれるのでしょう。

 

この曲はカラオケでもほぼ毎回歌われるそうで、小学生の時キッズステーションで流れていたそうです。

 

 迷子のように立ちすくむ私をすぐに届けたくて

 

その歌詞がただただ綺麗で切なくて、だいすきなんですよねぇ。

こんな詩のような言葉、出そうでなかなか頭に浮ぶものじゃないじゃないですか。


御本人の語りに触れた際、たいていこんな心境です。

 

 

2番の英歌詞の部分は抑えられない気持ちを放つように立ち上がり歌唱。

 

英歌詞の部分の、「out」って前置詞の連れてくる情景がとても切ないですよね。


Thinking about you every night 

(毎晩貴方のことを想って):「よく考えるとこの『Thinking』は分詞構文なのでちがうんですけれど、最初このThinkingを動名詞でとったんですよね。

動名詞って参考書によくto do(未来志向)と比べて過去志向と書かれているじゃないですか(説明は省く)。そこが終わってしまった恋感あるなぁ、なんて思ってたんですけれど、よく考えれば分詞構文でした。

 

and find out where I am

(自分がどこに居るか判ったの):find out 「判る」。outって前置詞は

 

 

 

こういう風に完了・出現っていうニュアンスなんですけれど、この曲にあてはめると考えて考えて、すっかり現れる気持ち。

 

 

I am not living in your heart

(私は貴方の心の中には住んでいないの):「in」は先程の「out」と逆ではないですけれど、上の図で示すと○という枠の中にいるというニュアンス。

この場合枠=貴方、であって・・・

 

あぁ、いいですねぇ。

ただただ英単語の話してたので戻りましょう。


その「in your heart」の歌唱、込めっぷりがとても切なくでも心地いいもので、リサイタルの1つの楽しみとなっておりました。

 

その2番の歌詞の後の感想で、青い照明(=貴方)に包まれていくのが、もうねぇ。


あぁ、いいですねぇ。

ただただ詠嘆ですよ。

 

(MUSIC FAIRの『奏』、ラストの引きの画のような景色だなぁと思ったのは内緒なのだ)

 

そして最後の「love」のロングトーンは客席に向かって青色の照明が向けられ伸びていくんですけれど、なんですかねぇ、キリスト系の教会って聖母マリアの青(絵画でもマリアは決まって青色のマントで描かれるんですけれど)の関係か青色のステンドグラスって多いじゃないですか。そんな優しい青に、ただただこの曲に包まれていく感覚でした。

 

 

 

そして最後は青色の照明に、遠くのあなたに包まれることなく、真っ暗な中へ閉じるんですよね。切ない。

 

 

最高のステージでした。


◯ルビーの指環/高橋真梨子(2010)

厳密に言うと原曲は寺尾聰さんなんですけれど、MCにてご本人が高橋真梨子さんのジャズアレンジが契機と仰っていたので、こちらを表記しました。

 

椅子に座り、脚組んで揺らめきながら歌唱される雨宮天さん。いるよねぇ、カラオケで。

 

間奏では 「ピアノ橘哲夫~」と紹介。

 

この!時!の!東京公演会場での左壁面の橘哲夫さんの影の話を誰かと共有したいと隠れていたのですが、誰も探してないみたいですね。

ピアノをかっこよく奏でる姿の影、もちろん影なので大きく横に伸びているんですけれど、そこがねぇ。

 

 

「ありがとうございます。元々寺尾聰さんがそれを高橋真梨子さんがジャズアレンジして、それを私がリサイタルでカバーさせてもらうという(笑) 私が好きになる歌って自分が歌う前提があって、たまたま高橋真梨子さんのジャズアレンジverを聴いて、これ歌いたい!って思ったんです。」

 

 

そうね誕生石はルビーなの

 

っていう歌詞があるんですけれど、ここで懐古おじさんが湧いてきまして。

Skyreachのリリースイベント、忘れもしない8/31アニメイト池袋の回で誕生石のお話をされていまして。

 

「誕生日はやずやの日で、あとちょっと我慢してくれたら誕生月がサファイアの9月になったのに。せめて1日我慢したら焼き肉の日なのに」という趣旨のことを仰っていまして。

 

東京公演終了後に、ふと仲良くさせていただいてる方から「そういえば誕生石」って話を振られて「あ、やっぱりそう思いましたよね!」と共有できたのがとても嬉しかったなぁ(´×`(´×`´×`)´×`)


◯ラヴ・イズ・オーヴァー/欧陽菲菲(1979) 大阪限定曲

 

大阪限定で歌われたこの曲。『恋におちて-Fall in love-』前で「大阪だしここらでビックリさせっかはないので(笑) ちょっとタイムスリップしたような感じで聴いてください。」と仰っていたじゃない!と。お好み焼きを食べて、食後のパンケーキですってお好み焼きを出された感覚。

 

ラストサビのそれまでの涙など見せずに別れた“あんた”の背中を押す歌詞とはうってかわって、奥底の気持ちを歌った『Love is over 悲しいよ』という歌詞、あれはそれまでいた後ろの影だと思うの。

 

その 『Love is over 悲しいよ』の気持ちの込め方がもう素晴らしくて、こちらもただただそこに引きずり込まれていくようで。

ただのカバーじゃなくて、これが声優のカバーなんだなぁって。

 

しばし、歌の主人公の気持ちを歌いたい、声優として歌いたいと仰っている雨宮天さん。その言葉を強く再認識させられました。

 

 

この曲との出会いは「テレビで男性の芸人さんが歌ってて、バラードなのにすごい熱量で歌詞がズバンッと、ね。」と仰っていましたね。

「あんた」が大阪っぽい、ということでこちらを大阪限定曲とされたそうな。

 

 

 


◯Close to you/カーペンターズ(1970)

 

ぽろりぽろりと紡がれるピアノの旋律。

そして、ぽつりぽつりとこの曲とのかかわりを縫い合わせていく雨宮天さん。

 

「出会いはCMで、もともと歌詞があると知らないで、口ずさむようになって、調べたら歌詞がある!って」

 

すごく独特で寄り添ってくれる感じが本当に好きなそうで、そしてピアノの音色が本当に好きだということ、ピアノと一緒に歌いたいなとこの曲を選んだそう。

「まさか最初からピアノと歌うことを決めていた訳じゃなくて、突然1個夢が叶ったみたいな」、と。

 

そんな場に立ち会えて嬉しかったですね。

 

 

 このピアノまじりのMC、御本人とこの曲の関係性、どの様にこの曲が御本人の傍を流れているのかを語られているシーンが狂おしいほど好きな場面でした。

 

「私なんかはせっかちで毎日せかせか過ごしているんですけれど、この曲は立ち止まって自分を思い出させてくれるような、大丈夫なのかなと思わせてくれる曲です」

 

「このメロディーを聴くと、焦っていたり、せかせかしていたり、な時でも『あ、大丈夫なんじゃないか』って思わせてくれる。歌詞が優しい感じで、すっと胸にはいってくる、すごく大好きなメロディーです。」

 

「毎日毎日どうしても、せかせか生き急ぐようになってしまう私ですけれど、『ちょっと立ち止まってもいいのかなぁ』と、そんな安心感をくれる曲」

 

「歌詞を読んでいくとかわいらしい、乙女チックで、メロディも優しくて。いろんなことに追われて、『あーどうしたらいいんだろう』っていう、そんなとき私の心を休ませてくれる、そんな曲です。」

 

 

「みなさんの前で大好きな曲を歌えて、聴いて頂いて嬉しい」

 

 

「私が好きな曲をただ自分のために歌うイベントだということを分かってくれている、そんな空間を作っているみなさんに届けるように歌えました。歌を通して、みなさんに想いを伝えたい。」

 

抽象的な感想なんていらなくて、ただただその言葉たちを強く感じる時間でした。

 

 

 

情景のメモは・・・なんかノートには「音楽をまとう感。宇宙の中、何かに包まれているような、人間の根本的な何か(原文ママ)」って書かれているんですけれど、なんでしょうね、これ。手の脳は勝手にこんなこと書いてますけれど、ただただ瞬きも忘れて、じっとそのシーンを焼き付けていました。

 

うーん、でも、宇宙の中は多分ミラーボールで流れていた光だと思うんですよね。

で、包まれているような、は御本人が紡ぎ上げる空間。

 

カーペンターズはこれまたうちの母が大好きだったんですけれど(最近コブクロばかり)、小学生の頃学校から2~3kmをへとへとと歩いて帰ってきて、玄関を開けるとMDコンポから耳にそよいだのはまさにこの『Close to you』や『Yesterday Once More』とか、『Heather』とか。


おやつに大学芋とか煮干しとかを食べながら、宿題をしながら聴いていたなぁ。

 

『I Can't Make Music』が大好きで当時よく口遊んでいたんですけれど、いつの間にか聴かなくなっていて、今回の公演後に思い出したように聴いてまた惚れてウォークマンにいれました。

いい再会の機会を本当にありがとうございました。

 

 

曲終わりのMCにて。

 

「気がつけば終盤です!」「えー!」に対して、「すごい気持ちよくて、このまま歌い続けられるんですけれど」

 と仰っていたことが嬉しかったですし、いい笑顔でした。

大阪公演の2部では「いつもと主旨違うライブでも「えー」どきはわかってくれる(笑)グッジョブです!」、と。

 

 

楽器の中でもピアノの音色が好きで、綺麗な音色や『ルビーの指輪』の様なジャズっぽい感じも好きなんだとか。

ピアノの生演奏が好きで、ピアノで歌うことになってから「この曲がいい」と、3曲(大阪は4曲)を選曲したそうな。「ただただ私が勝手に考えた曲です。」と話されていて、「ピアノで、この曲この曲いっぱいある、いつか歌えたら」という趣旨のことを仰っていましたね。

ぜひ、またピアノアレンジで御本人が好きな曲を聴く機会があればいいなぁ。

 

 

そして、洋楽や男性ボーカル曲ををあまり聴かないことに触れた際に「音楽を聴くより、歌うことが好きみたいで」自分が歌う歌ってて楽しいだろうなぁという曲を好きになると話されておりまして。

 

「自分が歌う前提で好きになる」「音楽を聴くより歌うことが好き」は僕にはなかった価値観でしたので、新鮮でした。

 


◯DESIRE-情熱-/中森明菜(1986)

 

「やっぱり中森明菜さんで1曲歌いたい」と思ったそうで、「私が中森明菜さんを好きになった曲」と『DESIRE-情熱-』を選曲された、とのこと。

 

中森明菜さんは凄い低音でかっこいい、かっこよく歌われる方。

かっこよくて低音ボイスですごく独特的な振り、それがハマりかっこいい。

 

燃えるようなかっこよさありながらクールにきめる

中森明菜さんの曲にはこの時期はこの曲という思い出があるそう。一時期はお風呂でずっと北ウイングを歌われていたそうな。

 

 

 

中森明菜さんとこの曲についてそう語られていましたね。

 

「どれ歌おうかなって思って、『ミアモーレ』とか『北ウイング』とか、あと『飾りじゃないのよ涙は』、頷いている方がいますね、どれもいいでしょ?(笑)」

 

どれもいいですよねぇ、本当に。

 

 

 

歌唱されている姿はただただ光景として焼きついています。

独特な振りまでしっかりと再現されていて、「ぶつかり合って」というサビ頭の情熱の赤を感じさせる強い歌唱と「desire」の抜きのクールさ、その込められた熱量の差が、形容し難い胸にまつわるドキドキを感じさせました。

 

遠方の席から見ていると、まるでステージの枠が箱テレビで歌唱シーンを見ている様でして、サビ部分では自然と脳にパンッパンッパンッとズームが寄っていく様な画が観てもいないのに切り出されるのです。

 

かっこえかった。

 

後ろの影、内に秘めた赤い情熱、ふふっ。

 


◯CAT'S EYE/杏里(1983)

「カバーラストはこの曲ー、CAT'S EYE。」と歌われだしました。

 

子供の頃キッズステーションを凄く見てて、アニメ『キャッツアイ』からこの曲を知って、しばらく曲を聞かずにいたところ、またもや中華屋で懐メロとして聴き「この曲知ってたけれどこんなかっこいい曲だったんだ」と再発見したそう。

 

中華屋で、え?(笑)いそうでしょ?割といそうでしょ?(笑) 海鮮坦々麺とか食べてそうでしょ?好きなんですよね、海鮮坦々麺。」

 

それでキャッツアイめっちゃかっこいい、いつか歌いたいと思っていたところ、今回のリサイタルのセットリストを組むにあたり「CAT'S EYEあるじゃん!アニソンだしかっこいいし。」「まさか叶いました」、と。

 

 別に歌詞に"青いドレスのセクシーガール"があるからではないです!スタイリストさんに作って頂いた特注ドレスですけれど、途中で気づいて恥ずかしくなりました(笑)」とも話されていましたね。

 

 

後ろの幕にあたる光がサーチライトみたいで、そこにねぇ、キャッツアイ3人みたいに、影が映るんですよ!!たまらん演出ですよ、あれ。

さらに、幕は左・真ん中・右と3箇所後方にあった訳なんですけれどそれぞれ映る影が泪さん、瞳、愛ちゃんの3人ですよー。

 

うまいなぁと印象に残っているのは大阪公演でのライトでして、サーチライトに目が眩み、一瞬消えたと思ったら歌声と共に雨宮天さんが立ち現れるんですよね。まるでキャッツアイ。

 

 

メモに踊る「瞳さん!瞳さん!!」の文字。


『キャッツ♥アイ』って、たぶん僕が初めて単行本でしっかり読んだ漫画だと思うんですよね。

おじいちゃんの家に、叔母が集めていた漫画が置かれていまして。

 

 『キャッツ♥アイ』とか『すすめ!!パイレーツ』とか『うる星やつら』、とか。幼稚園の頃から壁面にはチェッカーズのポスターの部屋で読みふけっていました。


いや、この3タイトルは本当に大好きな作品たちなのでオススメしたい。


 

僕は瞳さん!!!

 

 

 

「オケのあそこがないとアニソンっぽくないので、もう頑張って練習して私! 今日はいつの間にか英語多い感じになってしまっててんやわんやでした(笑)」と、曲中の間奏での台詞を御自身でいれたことを話されていました。あそこがないと、ってやっぱりありますし、ありがとうございました。

 

これにてカバー曲は終了。

 

「楽しい時間、あっという間で、ここにいる誰より私が思ってるんですけれど(笑)」、大阪公演の1部ではそう仰っていました。

嬉しくて喉奥が絞りちぎれそうでした。 

 

 


ここでお知らせ。

 

『雨宮天 12月にニューシングルとワンマンライブが決定!あわせてチケット先行予約も開始! 』| 雨宮天 | ソニーミュージック オフィシャルサイト http://www.sonymusic.co.jp/artist/amamiyasora/info/486623

 

 

□雨宮天5thシングル

2017年12月13日発売

 

□2nd ワンマンライブ開催決定

<LAWSON presents 雨宮天ライブ2017 “Aggressive SKY”>

2017.12.17 (sun)

愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール

 

2017.12.28 (thu) & 12.29 (fri)

東京・中野サンプラザホール (2days)

 

 

 

「けっこうかなりガシガシと攻めてますよね。」と笑顔。

 

 

「本当にありがとうございます。ありがとうございます。嬉しーなー。なんかねぇ、1stで終わっちゃったらどうしよって思っていたんです。でも立て続けに、見守ってくださっている皆さんの前でお知らせできて、嬉しいです!」

 

「熱い冬になりそうです!攻めて攻めていきたいです!」

 

 

 

 「やー、こんなに、なんだろうな、いっつも私の挑戦をあたたかく見守ってくれるみなさんにいろいろ発表できて嬉しいです。

 

 

「好きな曲だからこそ申し訳ないというか、こんなそうそうたる名曲を歌わせてもらって大丈夫かな?という気持ちもあって」

 

「それでも「私の好きな曲を知ってほしい」という気持ちがあり、「もしみなさんが『良かったよ』『楽しかったよ』と言ってくださるなら、リサイタル2があったらいいなと思います。」

 

「自分の本当に好きな曲があって、そんな好きな曲を歌えて、自分が好きな生ピアノと一緒に歌うことができて嬉しかったです。皆さんと一緒に素敵な時間を過ごすことができ、嬉しかったです。」。

 

「最近落ち込むこともありましたが、『私、もっと頑張りたいな』って思いました!」。

 

「あたたかいみなさんの前で歌えて良かったです。」

 

 

 「やー、本当に今日は来て下さりありがとうございました。ここでこうして次のライブが決まったよってお話できて良かったです。ここに居る方は私の歌を少なからず聴きたいと思っていてくださってる方・・・なに、ちがうの?(笑) 私がそういう人たちの前で好きな曲についてのルーツや、エピソードを交えて歌えて嬉しかったです。またやりたいです。今回は70年・80年がためでしたけれど、ほかの年代にも、70・80年代にもまだまだ歌いたい曲はあるので。」

 

 

「なんかこうやって歌っていくと大人っぽい曲が多くて、それをお伝えしたいのではなくて(笑) いろんな私を見てくれて嬉しいです。」

 

 

 

「来てくれるかな、良かったって思ってもらえるかなって、不安なことや緊張感もあったものの、1回2回、3回4回とやってみて、良かったと思っています」

 

 

 

 

 

今回は70〜80年代の曲のみを歌われていましたが、さらに昔の曲(『真赤な太陽』『東京ブギウギ』)や、逆に90年代の曲にも好きなものがあるとのことをお話されていましたね、

 

「またこうしてリサイタルをやれたらいいなと思いますし、また来てくれたら嬉しいです!」。

 

 


◯irodori/雨宮天

 

イントロ前は青い照明がステージ上に充ちていて。

 

遠い。

 

 

刹那、「ジャーンッ」という盛り上がりに合わせて赤色の照明がぐーんっと近くのです。

イントロの、この、目で殺しにくるような姿、引きずり込まれていく感覚がたまらなくゾワワッとくるんです。

 

大阪公演の2部が強烈に思い出として心の一等地にあるんです。

僕はあの公演ほどこれから『irodori』をニヤニヤを抑えながら体感することはこれからないんじゃないかな。もちろん曲の世界観に自分を落とし込んで歌われているんですけれど、とてもとても楽しそうで。


作詞作曲の塩野海さんが、Twitterで「99%の楽器は悪い、カラスの側で1%だけカナリアになっている楽器が…」と仰っていましたよね。

ピアノなのかなぁと思っていたんです。

今回こうして、ピアノが強調される形で聴くことができたんですけれど、ふむーっって。

 

 

 

間奏の揺らめきダンスの逆さ影、たまらんのですよ。

雑誌にこう寄せていらっしゃいましたね。

「歌手になりたいという夢を追いかけてきた人が現実に直面し、悲しみを抱えながらも力強く歌い続ける、そんなイメージのMVです。」

 

「赤い衣装の子は“ここは自分のステージではない”と思いながらも気丈に振舞っていて、白い衣装の子はその子の内面なので、どこか弱々しくおびえています。」

 

あの逆さ影はその子なんだろうなぁって。

 

それで、壁面の影。

ラスサビ頭の『Shall we dance?』の2回目の「dance」、この時の壁面影が大きくてとんでもない質量で。かっくいいんすよ。

 

 

そして最後の「ブルー」でそれまで曲のリズムに合わせてやり場のなく会場の節々に放たれていた青い光(意志)は一心に各方向から雨宮天さんを照らすのです。

 

 

その姿に東京の人口密度を超えるくらいの密度で、思う気持ちを感じておりました。

 

 

この曲が最後に、それまでの雨宮天さんの曲を彩ってきた曲の後に歌われていたことが、とても大きな意味があるなぁ、と勝手に。


その前提があったからこそ、このリサイタルでの『irodori』がこれまでとは違ったものに感じられたのかもしれない。

 


「皆さんの前で歌えて幸せでした!ありがとうございました!」。

 

「大好きな曲たちを、聴いてくださって、受け取ってくださって、(冗談めかして)そしてよかったら持って帰ってくださって、ありがとうございました!」。

 

「えー、今日は大阪まで来てカラオケかーいって思われたかもしれませんけれど、大好きな曲を歌えて、この曲のこういうところ好きなんだってみなさんと共有できて嬉しかったです。後ろの方の方もありがとうございました、お気をつけてお帰りください!」

 

 

各公演での終わりの挨拶は、本当に楽しくやりきった様に見えて、それがとても、ちゃんとそういう空間になったんだなって、嬉しかったです。

 

御本人の日常を彩る曲、雨宮天というアーティストの曲の根底を彩っている曲を教えて頂ける機会が頂けて、とてもありがたいことだなと感じました。とても嬉しかったです。

 


やっぱり、「この曲をカバーしてほしいなぁ」という気持ちはないなぁ。


「あ、この曲自分も好き!仲間だ!」って気持ちに、また出会えたらいいなぁ。

 

 

あのー、今日は本当にこのリサイタルをやれて、やりたいと言って良かったです。歌が、歌うことが好きな分、思い通りに歌えないことが苦しくて、気持ちが離れていた時もなくもないんです。でも、『irodori』を歌って、『irodori』を出す少し前から、以前にも増して70~80年代の曲を聴く機会があって、『やっぱり私もこんな風にキラキラして歌を歌い続けていきたい!』と、気持ちを取り戻させてくれた曲たちです。そんな風に力をくれている曲をみなさんの前で歌えて嬉しかったです。

 

東京公演の2部、『irodori』の歌唱前にそうお話されていました。

8月の『irodori』のリリースイベントのアニメイト回にてこの「趣味としての歌」についてカラオケを例に挙げながらお話されていたんですけれど。

 (詳しくはリンク先)

 

その時のトークを思い出したのですよね。

 

お話をお聴きしている限り、勝手な色の押し付けですけれど、御本人って歌が、歌うことが好きで育ってこられたと思うんですよね。

 

 

でも、そんな自分が好きなことで苦悩していかなければいけない、葛藤しなければいけないって凄く酷なことだなぁって。

 

アーティストデビュー時の記念ブックと“Various SKY”の時くらいの記事を見比べた時に、それはもう計り知れない、こちらで囲いきれないレベルなんだろうなとは慮っていましたけれど、うーん、ここから脚を伸ばしていきたい感情はあるけれど、多分7500字とかになるんでやめますけれど、

 

自分がどうしても努力せざるをえない立場にいることを自覚しなきゃいけない様なお仕事で生きているのは烈しい悲痛であり、単純に、単純なんて言葉で削ぎ落としてはいけないんだろうけれど、誰が見ても単純に何よりも凄いことなんだなって思うのですよね。

 

僕が雨宮天さんがかっこいいなぁって思う第一の要因ってここにあると思うんです。思考の奥底のぐちゃぐちゃしたところなんで綺麗な言葉で汲み取れませんけれど。

 

 

実はちょうどこのリサイタルにあたって東京公演の前に『チョ・イ・ス』のピアノバラードアレンジをお聴きする機会を頂いたんです。

その出来事からブリコラージュした気持ちなんですけれど。

 

やっぱり僕はこれからも雨宮天さんが好きな曲を歌い続けてくれること、

 

そしてそんな曲に「いいね Your Song」とお返ししていきたいな。

    

そんな「いいね Your Song」という気持ちを込めて、曲たちに対して拍手をしていました。

 

大阪公演2部、このリサイタル最後のあいさつ。

 

 

「えー、今日はこんなに好きなことを、好きな気持ちで、みなさんへの想いを込めて歌えてよかったです。自分のやりたいことをこれからも臆せず口にして、それが挑戦であっても挑戦していきたいです、頑張っていきたいと思います。」

 

 

こんな火を焚かなくてもいつまでも燻りつづける慰めの源泉を頂いたのだから

しっかり挑戦して、がんばらなきゃいけんねぇ。

自分もこの人の挑戦を応援するのに見合うような、素敵な人にならないといけんねぇ。

 

会場を出ると、遣らずの雨は降っていませんでした。